2009年11月01日

【本】釜本雪生・くぼうちのぶゆき編著「テキストサイト大全」

「テキストサイト大全」 釜本雪生・くぼうちのぶゆき編著/ソフトマジック/2002年

 テキストサイトに関する評論や、サイト管理人へのインタビューなどを集めた本。

 テキストサイトとは、「文章を主なコンテンツとするホームページ」のことで、特に個人の日記をそのメインコンテンツとするものだ。90年代末期から00年代初期にかけて隆盛を誇ったが、より簡易に更新ができるブログなどの登場により、現在では往時ほどの勢いはない。

 本書は、このテキストサイトを取り巻く文化が最も爛熟していたと言える時期に、混沌としたテキストサイト界隈の様子を整理して記録した、貴重な一書である。特に、「侍魂」や「ろじっくぱらだいす」といった巨大サイト管理人への長編取材は、当時のサイト運営者たちの息づかいを窺わせるもので興味深い。

 本書に登場する当時のテキストサイト群を見ると、自分自身がその頃よく巡回していたものも多くて懐かしい気分になるが、現在ではその多くが閉鎖・休止に至っている。また、テキストサイトのポータルサイトとも言えた「ReadMe!」が昨年機能停止したことも、この世界の衰退を端的に表す事実なのだろう。

 しかし、自分の思いを世界に発信し、同じ趣向を持つ仲間たちとの交流を目指すテキストサイトの精神は、その形をブログやSNS、twitterに変えて、現在も見事な発展を続けている。そうした意味で、本書が描いたテキストサイトの明るい未来は、的確な予想図であったと言ってよいのではないだろうか。

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2009年03月07日

【本】モスモス編集室「モスモスサーカス」

「モスモスサーカス」 モスモス編集室/リトル・モア/1996年

 「モスモス」という小雑誌をご存じだろうか。1990年代前半ごろ、モスバーガーが店頭で無料配布していたささやかなPR誌だ。広報目的の冊子のはずなのだが、そのコンテンツは妙に充実していて、各地のモスバーガー店舗・スタッフの紹介に始まり、各店に通う常連さん紹介、不思議な芸術作品群、ちょっと切ない人生相談、いがらしみきおの連載漫画、そして何より、ありとあらゆるテーマに対する愉快で秀逸な読者投稿の数々と、毎回読んでいて飽きない内容だった。当時中学生だった私は、この盛りだくさんの中身が詰まった小冊子をタダで貰ってくるのが何となく申し訳なくて、豊かとはいえない小遣いのなかからいつもバニラのシェイクを1つだけ買って、「モスモス」をもらって帰ってきていたことを憶えている。

 1991年6月から1996年3月まで足かけ6年に渡り刊行され、一時は発行部数が80万部にも達したというこの伝説のPR誌「モスモス」のエッセンスをより抜いて編集したのが、96年末に出版された「モスモスサーカス」だ。今見ても随分シュールで濃い、そしてどこか懐かしい世界が広がっている。この本に関わった人たちの中から、その後クリエイターを職業とするようになった方々もいるのだそうだが、それもうなずける気がする。

 「モスモス」が姿を消して、もう10年以上が経つ。けれども、今でも時々、このささやかな小冊子のことを思い出すことがある。一度あった復活の話もいつのまにか立ち消えになってしまったらしいけれど、もしまた近所のモスバーガーで「モスモス」的なものに出会えるようになったら、今度はちょっと立派なハンバーガーでも奮発して、ゆっくり眺めてみたいと思っている。 
 
posted by A at 23:34| 本(その他) | 更新情報をチェックする