2014年11月02日

【本】魚谷祐介「日本懐かし自販機大全」

「日本懐かし自販機大全」 魚谷祐介/辰巳出版/2014年

 今では絶滅危惧種となってしまった、うどん・そば、ハンバーガー、トーストサンドなどのレトロ自販機の現状を調査し、その設置場所などを紹介した本。

 昭和の香りが漂うフード自販機への、濃密な愛情にあふれた本である。現在ではすっかり見かけなくなってしまった懐かしい自動販売機たちを、全国規模で地道に調べ上げ、その設置店舗や機種、オーナーへのインタビュー、機械を修理する職人さんとの対談まで含めて掲載している。ちなみに、今でも現役で稼働しているうどんやそばの自販機は、全国でわずか約80台。ハンバーガーの自販機に至っては10数台、トーストサンドもたった20台弱で、いずれの機械も既に製造が中止されているのだそうだ。現存する自販機たちに残された時間も、もう決して長くはないのかもしれない。

 また、本書の下敷きになった著者のサイトでは、レトロ自販機が設置されているドライブインなどへの訪問記録を、動画でも紹介している。その分量の多さに著者の労力がしのばれるが、例えば、全国で2台しか残っていない津上弁当自販機を訪ねる動画は、郊外の夕景と、著者の叙情的な自作BGMがうまくマッチしていて、雰囲気のある作品に仕上がっている。

 かつてこれらの自販機が、当たり前のように日常に溶け込んでいた時代があった。近所の自販機コーナーで、あるいは家族で立ち寄った山間のドライブインで、クリーム色の安っぽいプラスチック容器に入ったうどんを、妙に短い割り箸で食べた記憶が私にもある。あのころはさして美味いとも思わなかったうどんも、もう簡単に出会うことはできないのだと気づくと、どことなく切ない思い出に変わってくる。これら昭和の名自販機は、過ぎてしまった懐かしい時代の記憶を呼び起こす、一種の触媒装置なのかもしれない。

posted by A at 11:59| 本(その他) | 更新情報をチェックする