2013年10月13日

【本】山本益博「味な宿に泊まりたい」

「味な宿に泊まりたい」 山本益博/新潮文庫/1998年

 料理評論家として知られる著者が、全国の高級旅館・老舗旅館の中から、料理自慢で風格のある宿を吟味して紹介した本。

 本書に登場するのは、京都の「俵屋旅館」を始めとした、庶民には容易に手が出ないような高級旅館の数々である。上等な食材をふんだんに使った料理や、贅を尽くした宿の施設、細かいところまで配慮の行き届いたサービスなどを見るにつけ、個人的には全く縁のない別世界の話と思うほかない。ただ、過剰な気配りに否定的だったり、途中で立ち寄った街角のラーメン屋も美味しければ褒めたりするなど、金銭的価値の高低にとらわれない著者の率直な講評は、なかなか小気味良いものであるように思えた。

 ネットで調べる限り、著者の言行には一部で批判があるようである。そうした噂の真偽はよく分からないが、さまざまな料理や旅館の美点を端的に捉え、その魅力を分かりやすく伝える著者の技術は、このような批判とは切り離して評価すべきものであろう。高級料理に臨むとき、どういう着眼点で料理に向き合えばよいか、あるいはハイグレードなサービスをどのように受け止めればよいか。私のように、美食の世界には何の興味も知識もなかった人間にとっては、そういった基礎をうかがい知る参考書にもなる一書である。

posted by A at 09:07| 本(その他) | 更新情報をチェックする