2012年02月19日

【本】有賀ゆう「スーパーエリートの受験術」

「スーパーエリートの受験術」 有賀ゆう/アルファベータ/1994年

 東京大学理科三類や薬剤師国家試験などに合格した著者が、受験テクニックや、受験生活の過ごし方、時間の使い方、食事や成功心理学に至るまで、さまざまな切り口から受験術を解き明かした本。

 Amazonで異様な高値が付いていることで有名な本である。この記事をアップした時点でも、60,000円と200,000円で2冊出品されており、過去には800,000円(!)で売りに出されていたこともあった。

 残念ながら現在は手許にないのだけれど、受験生当時にこの本を読んだ記憶を辿ると、受験テクニックのほかに、受験に向けた心構えや生活態度などに相当な紙幅を割いていて、一種の自己啓発本のような色合いを持つ本だったように思う。類書の中にそうした特徴を持つ本はあまり見当たらなかったので、新鮮な印象を受けた記憶がある。

 また、本書に紹介された受験テクニックの中にも斬新なものがあった。例えば、「選択式の問題を、本文を見ずに選択肢だけを見て解く」という方法は衝撃的だった。すなわち、出題者が問題を作成するときの心理を読みながら正しい選択肢を探り当てていくという、ちょっと小賢しい方法なのだが、大学受験以外にも応用が利く便利なテクニックだった。(必ずしも成功率が高い方法ではないので、個人的には「正攻法で問題を解くに当たり、正答の目星を付ける」程度の使い方をしていた。)

 しかし、本書に何万円もの価値があるかというと、それはまた別の話ではないか。確かに本書には受験に有用な情報が詰め込まれているけれど、どんなに受験情報を集めようが、結局は自分でみっちり勉強しなければならないのだ。私自身、本書も参考にしながら志望校に合格したけれど、それは本書が素晴らしかったからではなく、単に受験生時代に猛勉強したからにほかならない。本書は決して、難関大学に合格する学力を簡単に与えてくれたり、受験の辛さを劇的に救済したりするような、「魔法の杖」ではないことは銘記されていてしかるべきではないかと思う。

 著者は、本書の内容が古くなってしまっていること、もう受験業界から離れていることなどを理由に、本書を再刊するつもりはないそうである。おそらくこうした受験参考書の常として、「本で紹介されたとおりにやったのに上手くいかなかった」というクレームをつけられたり、あるいは医学の道に進むにつれて受験への興味が薄れたりといった事情もあったのではないかと拝察する。

 しかし、本書の中で紹介されている参考書などに陳腐化した部分があろうとも、受験というものの捉え方・考え方にはまだまだ汲むべきものがあるだろうし、そうした事柄を分かりやすく解説する才能も、誰にでも備わったものではない。また、法外な出費をしなければ本書を読むことができないという現状も、およそ健全な状態とは言えないのではないか(国会図書館に行けば、5,000円程度で全文コピーできるようだが)。絶えざる需要がある以上、あくまで1994年当時の受験界を前提にした本であり、現時点でその内容に責任は負えないことを留保した上で、一種の考古学的な価値を持つ本として、部数限定で本書を復刊しても良いのではないかと個人的には思う。

posted by A at 09:53| 本(その他) | 更新情報をチェックする