2011年11月06日

【本】小野健「栂海新道を拓く 夢の縦走路にかけた青春」

「栂海新道を拓く 夢の縦走路にかけた青春」 小野健/山と渓谷社/2010年

 著者とその仲間たちが、北アルプス・朝日岳から新潟県の親不知までをつなぐ「栂海新道」を開拓した記録をつづった本。同著者による「山族野郎の青春」(昭和46年刊)を全面改稿したもの。

 著者を代表とする新潟の小さな登山団体、「さわがに山岳会」が、北アルプスの標高3000m近い山々から海抜0mの日本海までを結ぶ縦走路、栂海新道を切り拓く軌跡を描いた本である。長大な登山道を作るために、休日のほとんどを伐開作業に費やす山岳会メンバーたちの苦闘ぶりを見ると、そのストイックな生活にはただ感心してしまう。同時に、魅力的な新道の開拓という、情熱を注ぐに値する偉大な目標を持つことができた彼らには、ちょっとした羨望も覚えさせられた。

 私財をなげうって新道整備にのめり込み、十分に家庭を顧みない著者は、その奥さんや子供たちから見れば、必ずしも理想的な家庭人ではなかったのかもしれない。しかし、仕事で成果を上げて博士号を授与され、地元では4期16年にわたり町議会議員の要職を務め、さらには山岳界で広く評価される業績を残した著者の人生行路は、男の生き方としては理想の形のひとつではないかとも思える。我が身を振り返ると、これだけ骨太な人生の過ごし方とはちょっと程遠いなと、少しばかり焦燥感をかき立てられてしまう。