2010年03月01日

【本】長嶺秀雄「戦場 学んだこと、伝えたいこと」

「戦場 学んだこと、伝えたいこと」 長嶺秀雄/並木書房/2003年

 レイテ島で戦った元陸軍将校が、自らの戦場体験を踏まえて所感を書きつづった本。

 著者は、太平洋戦争のレイテ島の戦いで第1師団歩兵第57連隊の大隊長として活躍し、辛くも生還を遂げた人物である。レイテ島における著者の行動の軌跡は、大岡昇平「レイテ戦記」をはじめ、複数の戦記に描写されている。本書は、レイテ島や中国戦線での著者の戦争経験を踏まえて、戦場において留意すべき点や体験談をまとめた本である。

 一例を挙げると、本書の冒頭に「タバコ」という一項がある。タバコは一般的には嗜好品とされているが、著者は、「戦場においては、アルコールの興奮性よりも、タバコの鎮静性が、不安や焦慮を落ち着かせて安堵に導く意外な効果があるようである。(中略)そして一本のタバコも分け合う戦友の友情が、部隊の団結を高め士気を鼓舞することになるのである」と述べて、タバコが役に立った具体的な場面をいくつか挙げている。現代では強く排斥されているタバコが、戦場では意外な効用を果たしていた、という点が興味深かった。

 また著者は、「タバコ」のほかにも、「シャベル」「病気」「塩」「糧食」「地図」「トイレ」「馬」や、あるいは戦闘方法や部下の掌握方法などについて、実際に戦争の場に身を置いた者でなければ分からない教訓を詳しく紹介している。こうした戦争に関する先達の知恵が活かされる場が、再度現出することはあってはならないと思うけれど、著者がどのように死地をくぐってきたかという体験談として、なかなか関心を惹かれる内容だった。

posted by A at 01:11| 本(戦記) | 更新情報をチェックする