2010年01月04日

【本】森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦/角川書店/2006年
(角川文庫版(2008年)で読みました)

 大学生の「先輩」が、黒髪の乙女である後輩の「彼女」の気を引こうと奮闘する、ちょっとコミカルな恋愛ファンタジー。2007年山本周五郎賞受賞、本屋大賞2位、直木賞候補作。

 リズミカルで巧妙な文章、愉快な登場人物、ファンタジックな舞台設定、そして、どんどん引き込まれる破天荒なストーリー。実に魅力的な物語だ。博識な著者が随所に仕掛ける、衒学的なパロディにもニヤリとさせられる。ライトノベル的な本かな、という先入観があってなかなか手を出せずにいたのだけれど、読み出すと止まらなくなる一冊だった。

 本書の魅力は沢山あるけれども、個人的には、ヒロインの純真なキャラクターに強く惹かれた。人を疑うことを知らない善意あふれる性格や、人の幸せを(やや勘違い気味に)祈れる純粋さ、そうした善なるもののために彼女が発揮する驚異的な行動力は、読んでいて相当気持ちが良い。そして、その天然ボケぶりや、「おともだちパンチ」とか「なむなむ!」といった小道具が、彼女の魅力をよりいっそう引き立てているのだ。

 彼女のような天真爛漫さは、我々も子供の頃にはある程度持っていたはずのものだ。けれども、歳を重ねるにつれて、我々はそれをどこかに置き忘れてしまう。そうした「失われた純真さ」への憧憬が、彼女に惹かれる理由の一つかもしれないな、などと考えたりした。

posted by A at 01:04| 本(小説) | 更新情報をチェックする