2009年09月05日

【本】塩田潮「田中角栄失脚」

「田中角栄失脚」 塩田潮/文春新書/2002年

 総理の座まで上り詰めた田中角栄が、いわゆる金脈問題をきっかけに権力の座を追われていく経過を、「文藝春秋」昭和49年11月号に掲載された2本の特集記事「田中角栄研究」「淋しき越山会の女王」の執筆過程を軸にして描き出した作品。

 「田中角栄研究」などの執筆には直接関わらなかったものの、後に「文藝春秋」記者として活躍した著者によるドキュメンタリーである。「文藝春秋」がいかにして立花隆と児玉隆也という二人のライターに白羽の矢を立てたのか、記事の基となる事実がどのように発掘・収集されたのか、執筆の過程で政治の側からどのような妨害工作が行われたのか、記事の掲載について「文藝春秋」首脳陣はどう捉えていたか、といった内幕が詳細に語られ、臨場感にあふれていて面白い。

 本書の大きな見所の一つは、「淋しき越山会の女王」を著したジャーナリスト、児玉隆也の仕事ぶりと壮絶な最期だろう。「淋しき越山会の女王」という記事タイトルはしばしば目にしたことがあるが、原文を拝見したことはなく、そもそも児玉氏という名前さえ存じ上げなかった。記事を書かれる側にとっては厄介この上ない存在であった場合もあるだろうが、個々のテーマに対し誠実に取り組む彼の姿勢からは、きっと「書く」ということが好きだったんだろうな、という印象を受ける。若くして死んだこのライターが残した作品を、一度読んでみたいと思った。

posted by A at 20:01| 本(新書) | 更新情報をチェックする