2009年02月09日

【本】庄司薫「さよなら快傑黒頭巾」

「さよなら快傑黒頭巾」 庄司薫/中央公論社/1969年
(中公文庫版(1973年)で読みました)

 いわゆる庄司薫四部作の第三作(ただし、第二作の「白鳥の歌なんか聞えない」より本書の方が先に刊行された)。主人公が、兄の知人の医学生や若手政治学者をめぐる出来事などを通じて、青春や理想の挫折を垣間見る物語。

 二人の魅力的な美少女も気になるけれど、やはり本作の軸となるのは、主人公の薫くん(どうしても「くん」を付けたくなる)と、兄貴を始めとした人生の先輩たちとの関係だろう。薫くんの兄貴たちは、「人生という兵学校」における頼もしい先達であり、薫くんの目には見えないことを教えてくれたり、大人として頼り甲斐のあるところを見せたりする。

 しかし、兄貴たちが頼もしければ頼もしいだけ、最後の場面で彼らが見せる泥酔した姿は、より一層強い印象を残すものになる。そして薫くんは、そんな兄貴たちのために、早朝の玄関でひたすら来るべきものを待ち続ける。社会に出て現実を知り、自分の力では敵わないことがいくらもあることを知ってしまった兄貴たちへのやさしさと、自分はまだ負けないというささやかな自負をこめて。

 庄司薫の小説には、10代終わり頃の「男の子」が抱く理想や感性がきれいに封じ込められている。もう薫くんの兄貴たちとほぼ同じ年頃になってしまったけれど、彼の一連の作品を読めば、10年ほど前、薫くんと同じくらいの歳に初めて四部作を読んだ頃の気持ちを、少しだけ思い起こすことができる。

posted by A at 00:00| 本(小説) | 更新情報をチェックする