2019年08月24日

【本】志村正彦「東京、音楽、ロックンロール 完全版」

「東京、音楽、ロックンロール 完全版」 志村正彦/ロッキング・オン/2011年

 ロックバンド・フジファブリックのフロントマンだった、故・志村正彦の日記集。バンドの公式ウェブサイトに掲載されていた内容を書籍化したもの。

 私がフジファブリックというバンドを初めて知ったのは、2004年秋のことだった。毎週土曜の夜に観ていた、テレビ東京の「ジャパンカウントダウン」という音楽番組で、「赤黄色の金木犀」(動画)という曲がオープニングテーマとして流れていた。叙情的なイントロのギターや、それとは打って変わった中盤の激しさにひどく惹かれて、当時この歌をずいぶん聴き込んだものだった。

 その後、(次のシングルの「銀河」が、個人的にはあまりピンと来なかったこともあって)しばらくこのバンドの曲は聴いていなかったのだけれど、2009年春に「Sugar!!」(動画)がWBCの野球中継のテーマソングに採用され、久しぶりに彼らの音楽を耳にした。曲の雰囲気が結構変わったな、と思いつつも、大きなタイアップも付いて第一線で活躍し続けていることを、少し嬉しく思った記憶がある。そしてその9か月後、次に接した彼らのニュースは、ボーカル・志村の訃報だった。

 あれから10年が経ち、改めて本書に綴られた志村の足跡を振り返ると、さまざまな試行錯誤を繰り返しながらも、このバンドが着実に実績を積み重ねてきた過程がはっきりと浮かび上がってくる。志村という一人の天才(そう呼ぶと、本人は嫌がるかもしれないけれど)の喪失は、バンドにとってもファンにとっても、決して拭い去ることのできない大きな悲しみだったけれど、彼が残した遺産の大きさは、フロントマンを失ったバンドを存続に導く、決定的なレールとなったのだろうと思う。

 志村の後を受けてフジファブリックのボーカルを取った山内総一郎は、「Sugar!!」の3年後に出た次のシングル「徒然モノクローム」(動画)の中で、次のように歌い上げている。

 「あきらめるのはまだ早い
  行き詰まった所がほら それが始まりです」――。

 先日、フジファブリックはテレビ朝日の「ミュージックステーション」に初出演を果たし、代表曲「若者のすべて」(動画)を披露した。彼らの真夏のピークは、きっとまだ去らない。


posted by A at 18:38| 本(その他) | 更新情報をチェックする