2015年09月12日

【本】込山富秀「「青春18きっぷ」ポスター紀行」

「「青春18きっぷ」ポスター紀行」 込山富秀/講談社/2015年

「学校を卒業すると、春は黙って行ってしまうようになる。」

 春、夏、冬の一時期、JRの駅に、ローカル線の美しい風景を捉えたポスターが貼り出される。JRの普通列車を乗り放題で利用できる切符、「青春18きっぷ」の広報ポスターである。1990年夏から2015年春までの期間に使われた、この秀麗なポスターの数々を、一冊の写真集としてまとめたのが本書である。

 本書に掲載されたポスター群を眺めると、そこに収録された日本各地の明媚な風景や、森や川や海の情景の美しさが、見る者に鮮やかな印象を残す。また、鄙びた駅のホームや、風吹く海岸の線路脇などに配置された旅人の姿を見ると、自分自身もそこを訪ねてみたいという強い衝動に駆られてしまう。毎日利用する味気ない駅で、このような旅情に溢れたポスターを見せつけられるのは、正直、ちょっとした目の毒である。

 また、そうした風景の美しさとともに、これらのポスターを名作品たらしめているのが、写真に添えられた珠玉のコピーであろう。冒頭に掲げたのは、1999年春のポスターで使われた、個人的に最も好きなコピーである。旅の世界への憧憬、まだ知らない風景への期待を、あの頃の自分は確かに持っていたはずだった。そうした瑞々しい感情も、社会人として働く中で、もうすっかり失くしてしまって久しい。