2009年03月15日

【本】亀畑清隆「北海道廃線駅跡写真集」

「北海道廃線駅跡写真集」 亀畑清隆/柏艪舎/2006年

 今では廃線となった、北海道の瀬棚線、岩内線、万字線、羽幌線、天北線、興浜北線、美幸線、興浜南線、相生線、標津線、根北線の各駅跡を辿った写真集。2005年夏取材。全編モノクロ。

 廃線になって20年近く経ったローカル線の、駅跡の現在を切り取った写真集だ。だだっ広い平原にポツンと残る、かつては駅舎だった廃屋。茂る木々や草にうずもれた、崩れかかったコンクリート製のホーム。再開発が進んだ町の中で、もはや駅があった痕跡すら残っていない場所。一枚一枚の写真が、かつて駅のあった土地の歴史を語りかけるようで、手を止めてじっと見入ってしまう。駅ごとに著者が記した、取材に関するエピソードや丁寧なコメントも、失われた駅を愛する気持ちが伝わってくるようで良い。

 もはや叶わない願いだけれど、天北線という路線には一度乗ってみたかった。音威子府から北海道北部の平原を突っ切り、オホーツク海沿いの小さな町々をつないで、最北の地である稚内に至る長大路線だ。天塩と北見という二つの地名から取った「天北」という路線名も、ひたすらに北を目指すイメージと重なって、どことなく憧れの対象になる。今では他の交通手段で辿るほかないけれど、この写真集でもたびたび見られるような、泣きたくなるほど広く晴れた空や、夏の匂いが立ちこめる草原を車窓から見てみたい気がする。

2009年03月07日

【本】モスモス編集室「モスモスサーカス」

「モスモスサーカス」 モスモス編集室/リトル・モア/1996年

 「モスモス」という小雑誌をご存じだろうか。1990年代前半ごろ、モスバーガーが店頭で無料配布していたささやかなPR誌だ。広報目的の冊子のはずなのだが、そのコンテンツは妙に充実していて、各地のモスバーガー店舗・スタッフの紹介に始まり、各店に通う常連さん紹介、不思議な芸術作品群、ちょっと切ない人生相談、いがらしみきおの連載漫画、そして何より、ありとあらゆるテーマに対する愉快で秀逸な読者投稿の数々と、毎回読んでいて飽きない内容だった。当時中学生だった私は、この盛りだくさんの中身が詰まった小冊子をタダで貰ってくるのが何となく申し訳なくて、豊かとはいえない小遣いのなかからいつもバニラのシェイクを1つだけ買って、「モスモス」をもらって帰ってきていたことを憶えている。

 1991年6月から1996年3月まで足かけ6年に渡り刊行され、一時は発行部数が80万部にも達したというこの伝説のPR誌「モスモス」のエッセンスをより抜いて編集したのが、96年末に出版された「モスモスサーカス」だ。今見ても随分シュールで濃い、そしてどこか懐かしい世界が広がっている。この本に関わった人たちの中から、その後クリエイターを職業とするようになった方々もいるのだそうだが、それもうなずける気がする。

 「モスモス」が姿を消して、もう10年以上が経つ。けれども、今でも時々、このささやかな小冊子のことを思い出すことがある。一度あった復活の話もいつのまにか立ち消えになってしまったらしいけれど、もしまた近所のモスバーガーで「モスモス」的なものに出会えるようになったら、今度はちょっと立派なハンバーガーでも奮発して、ゆっくり眺めてみたいと思っている。 
 
posted by A at 23:34| 本(その他) | 更新情報をチェックする